京都と奈良の移動方法は多くありますが、その中でメジャーな方法が近鉄を利用することでしょう。その近鉄で早くて快適な手段は特急です。この系統は京奈特急ともいわれます。京奈特急は派手さはありませんが、30分間隔で運転されており、根強い需要があることが伺えます。その実態を実際にのって確認しました。
写真1. 近鉄特急の旅はここから始まる
京奈特急の概要
まず、京奈特急の概要を確認しましょう。
近鉄京奈特急の概要を箇条書きで示します。
·区間:京都−近鉄奈良
·所要時間:35分程度
·標準停車駅:京都、丹波橋、大和西大寺、近鉄奈良
·料金(運賃と特急料金の合計):1030円
·運転間隔:おおむね30分間隔
まず、不正確な部分がありつつも、わかりやすくまとめました。京都側の発着駅は京都駅です。中心部からは離れていますが、新幹線から乗りかえやすい立地条件です。新幹線で東京や九州方面から奈良へのアクセスには便利ですね。所要時間は35分程度です。朝と夕方は一般列車の本数が多いので、そのぶん所要時間はかかります。なお、京都側は丹波橋も利用可能です。丹波橋では京阪と乗りかえができ、京阪の通る京都の奥深く(四条河原町まど)からのチャンネルも開かれています。大和西大寺は奈良のジャンクションで、ここから橿原方面や難波方面への乗りかえも可能です。運賃が620円、特急料金は510円の合計1030円です。
運転間隔ですがおおむね30分間隔で運転されています。京都発毎時20分と50分です。ただし、16時以降は毎時00分発と30分発になります。逆に、奈良発は10分発と40分発が基本となり、16時以降は毎時00分発と30分発となります。なお、奈良側のジャンクションである大和西大寺までは本数はもっと増えます。京都発毎時10分と40分です。16時以降は毎時15分と45分に変わります。橿原方面は伊勢にいく「しまかぜ」のような気軽に利用できない系統もありますが、京都と奈良を結ぶ系統はそのようなものはなく、気軽に利用できることができます。ただし、事前の座席指定は必要ですので、駅で特急券を購入するときに座席指定をしてもらいましょう。
近鉄特急の内装を見る
このような基本的なことを押さえた上で、実際に乗ってみましょう。
写真2. 近鉄特急の汎用型(写真がぶれていることには触れない!)
近鉄特急にはさまざまなタイプの車両がありますが、その多くは汎用型の車両です。その汎用型の最新型の22600系に当たりました。その車内を見てみましょう。
写真3. 美しいデッキ部分
雰囲気あるデッキです(写真3)。製造初年は2009年ですので、それなりに新しい車両です。90年代以降の車両はデッキにも工夫が凝らされていますが、この車両もその例に漏れていません。
写真4. 出入口付近を眺める
出入口を客室側から眺めます。きちんとデッキと客席が分けられていることが改めて確認できます(写真4)。最近の関東の座席指定列車はデッキもない仕様ですが、そのような車両とは大違いですね。
写真5. 客室全体を眺める
客室全体を眺めます(写真5)。赤系の座席が目立ちます。2000年代前半の車両はグレー系の車内が多かったように思えますが、2010年代になると座席の色は有彩色に変化したように思えます。
写真6. 客室の雰囲気
座席の上に照明があることに気づかされます(写真6)。関西地区の車両は座席の上に照明があるのです。
写真7. 間接照明が美しい
また、間接照明があります(写真7)。汎用特急といえども、雰囲気があることがわかります。汎用特急といえども、快適性が重視されていることがわかります。
写真8. 座席の背面:テーブルがある
座席の背面にテーブルがあります。ひじ掛けの内部にもテーブルがありますが、座席背面にもテーブルが備わっているのです。これは大きなサービスですね。
写真9. 座席にはコンセントがある
座席にはコンセントがあります。2009年という登場時期はモバイル機器がどんどん普及していって、電源の需要が高まっていた時期です。そのため、車内にもコンセントがあります(写真9)。
写真10. ひじ掛けにもテーブルがある
写真11. ひじ掛けのテーブルを展開した
向かい合わせにした場合は座席背面のテーブルを使えません。そのような場合に備えて、ひじ掛け内部にもテーブルがあります(写真10-11)。
写真12. 足のせも完備!
足のせも完備されています(写真12)。くつろぐには良いですね。
写真13. 洗面所も備わっている
洗面所も備わっています(写真13)。
このように、汎用車といえども、快適性に工夫が凝らされていて、「イベント性はないけど、快適に利用することができる」ことに主眼が置かれています。
近鉄特急の車窓から
さて、京都から奈良までの車窓も見てみましょう。
写真14. 京都の市街地を走る
京都を出ると、京都の下町的なところを走ります(写真14)。東京よりも古い建物が多いように感じます。このような街並を見ると、「京都に来た」と思うのです。
写真15. 京都の桜が美しい
日本は桜の国です。至るところに、桜の木があることに気づかされます(写真15)。桜の木はほぼ一斉に花が咲きます。これは、桜の木がみんなクローンだからです。桜にはおしべとめしべがなく、接木で増殖しています。そう考えると、一気に気持ち悪くなりましたね!
写真16. 京阪宇治線を超える
京阪宇治線を超えます(写真16)。近鉄京都線と京阪宇治線は直接乗りかえることができません。京阪宇治線が中書島ではなく、丹波橋で分岐していたら、なんて考えてしまいます。
図1. この付近の鉄道路線の関係(googleマップから引用)
参考情報として、この付近の鉄道路線の関係を示しました。結果論となりますが、伏見桃山と桃山御陵前をターミナルとして同一駅として整備して、京阪宇治線もここが始発であれば、京阪特急も京都市南部で2駅も停車する必要はなかったでしょう。ただし、京都には京都の事情があるのでしょう。
写真17. 宇治川を渡る
宇治川を渡ります(写真17)。この付近の京阪宇治線の駅は「観月橋(かんげつきょう)」といい、風流ですね。ダイヤ改正1日前の京阪電車(祇園四条から宇治までの前面展望)でも京阪宇治線の様子を取り上げています(余談ですが、2017年に執筆したこの記事は、2019年現在の記事よりも簡素ですね)。
写真18. 田植えが始まった
京都の郊外を走ります。東側には山が広がります。私は東京に住んでいますが、どことなく遠い地に来たように思えます。ただし、日本の景色は北海道を除いて比較的風景は似ていますが、地域ごとに差があるのです。
写真19. 美しい木津川を渡る
木津川を渡ります(写真19)。川を渡る場面は車窓のアクセントです。
写真20. 日本の原風景のような景色
のどかな風景の中を走ります(写真20)。
写真21. 高の原周辺の新興住宅街
のどかな景色の中を走っていましたが、新興住宅街が広がりました。高の原付近は住宅開発が進んでいるのです。高の原は(京都方面から向かうと)上り勾配の途中にありますが、その上り勾配の途中で京都府から奈良県に入ります。私は高の原-平城間の丘陵地帯が府県境だと思っていたので、意外でした。
図2. 高の原付近の地図(googleマップから引用)
写真22. 丘陵地帯を走る
というわけで、丘陵地帯は京都府と奈良県の府県境ではなく、奈良県内です(写真22)。奈良の周囲の山地を走っています。
写真23. 大和西大寺付近の住宅街
丘陵地帯が終わると、急に住宅街に入ります(写真23)。丘陵地帯が終わったあたりが平城駅(「へいじょう」と読みます)ですが、平城と大和西大寺は近いです。JRの平城山は「なら」やまと読みますが、近鉄は「へいじょう」と読むのですね。
写真24. 平城京跡が再現されている
近鉄京都線の旅は終わりましたが、わが京奈特急は近鉄奈良線に入ってさらに進みます。大和西大寺を出ると、平城京跡の中を突っ切ります(写真24)。現在の首都(東京)も多くの路線が我がもの顔で伸びていることを考えると、かつての首都を線路が横切ることはそこまで変ではないかもしれません。
写真25. 新大宮の踏切
新大宮は通過です。新大宮は奈良の歓楽街に近いこともあり、観光客が訪れない「真の奈良」という地域なのでしょう。
写真26. 新旧の車両が連結されている
このように、奈良に着きました。車内放送で「前の2両は扉が内側に開きます」と案内されていました。私が乗った車両はそうではありませんので、別の車両が連結されていることに気づきました。そう、最新型の車両に古い車両が連結されていました(写真26)。近鉄の汎用特急は新型と旧型が連結されることは当たり前に起こります。私が乗ったときもその原則から外れていなかったのです。
写真27. 旧式の車両がいた
旧式の車両がいました(写真27)。こちら側から眺めると、とても新型車両が連結されているように見えないことでしょう。
写真28. 近鉄奈良駅
このように、駅から出た私は奈良の街に放り出されたのです。