夕方ラッシュ時の上野東京ラインの混雑状況(拠点で観察、現場調査結果)

記事上部注釈
弊サイトでは実際に利用したサービスなどをアフィリエイトリンク付きで紹介することがあります

東京から埼玉県、千葉県などに向かう大動脈である上野東京ライン。その大動脈の夕方の混雑状況はいかがでしょうか。品川、新橋、東京、上野の着発の断面で混雑を確認し、夕方ラッシュ時の混雑状況を詳細に調査しました。

回送列車1672E

写真1. 夕方なのに回送とは…もったいない!(東京で撮影)

平日夕方ラッシュ時の上野東京ラインの混雑状況まとめ

以下、長い本文を読む気がない人のために、要点をまとめます。

・明らかに宇都宮・高崎線系統と常磐線系統で混雑が異なる
・常磐線系統は比較的空いていて、宇都宮・高崎線系統は混んでいる
・宇都宮・高崎線系統:品川到着時点でも座れず、東京発車時点ではドア付近の立ち客が密度が高い
・常磐線系統:品川発車時点(新橋到着時点)では空席のある車両もあるものの、上野発車時点では座席前の吊革が埋まる

混雑調査の概要

今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。

簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。

弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。

表1. 混雑ポイントの概要

乗車ポイントの概要

せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。

混雑ポイント120ポイント相当

写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント140ポイント相当

写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント160ポイント相当

写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)

混雑状況の生データ

まずは、混雑状況の生データを示します。品川到着、品川発車(=新橋到着)、東京到着(=新橋発車)、東京発車(=上野到着)、上野発車という大規模な調査ですので、それぞれの調査について取り上げます。そして、全体的な混雑状況を分析することにします。

品川到着時(川崎→品川)の混雑状況

薄暮の品川に入線するE231系

写真5. 品川に入線する上野東京ライン

まずは、品川到着時の混雑データを示します(表2)。細かな気づきも記します。この調査は2018年1月に実施したものです。

表2. 品川到着時の混雑状況

夕方時間帯品川上り(川崎→品川)の混雑調査

・中央付近の車両の混雑は激しく、両端の車両の混雑はゆるい
※18:21着の場合ですと、両端の車両(100ポイント)と中央付近の車両(140ポイント)の格差は2.5倍にも及ぶ。この混雑格差は上野発車時点でも発生しています。

・前列車間隔が短い列車や平塚始発は空いている傾向がある
※17:33着と18:05着が空いている傾向がありますが、この2列車に共通する特徴は特にありません。17:33着は前列車間隔が7分と短いこと、18:05着は平塚始発と比較的短いことが特徴です。

・前列車間隔が長い列車は混んでいる傾向にある
※18:21着と18:48着が混んでいる傾向があります。18:48着はラッシュ時のピークをやや過ぎていますが、前列車間隔が12分もあるので、混雑が顕著ですよね。

・ただし、列車ごとのバラつきよりも車両ごとのバラつきが大きい
※列車別の混雑のバラつきよりも、車両別の混雑のバタつきが目立ちます。つまり、空いている状態を選ぶならば、どの列車にするかを考えるより前に、両端の車両に向かったほうが良いということです。

品川での着席可能性:宇都宮線と高崎線

残念ながら、品川で確実に着席することは困難でしょう。品川到着時点で空席が存在する列車はごくわずかなためです。ただし、品川の後に新橋や東京というビッグターミナルを経由します。そこで降りる人を目ざとく見つければ、新橋などからの着席が可能になるかもしれません。

品川での着席可能性:常磐線の場合

常磐線は全て品川始発です。そのため、品川で乗車すれば確実に着席できます。では、発車1分前でも着席可能なのでしょうか?1号車付近の混雑状況を軽く見ましたので、簡単に紹介しましょう。

例1. 17:36発の場合

品川17:38発常磐線の発車直前の1号車付近

写真6. 17:36発の発車直前の混雑状況

17:36発は発車直前でも空席が見られます(写真6)。つまり、17:36発は1号車であれば確実に着席できるということです。

例2. 18:08発の場合

18:02ごろの常磐線(発車6分前)

写真7. 18:08発の発車6分前の混雑状況

18:08発の発車6分前の様子です(写真7)。この時点で座席が埋まっていることがわかります。その日ごとに誤差はあるでしょうが、7~8分前―18:00ごろ―にホームに着かないと着席は困難であることがわかります。

例3. 18:24発の場合

常磐線18:24発の7分くらい前

写真8. 18:24発の発車7分前の混雑状況

18:24発の発車7分前の様子です(写真8)。この時点で座席が埋まり、わずかながら立ちも発生しています。その日ごとに誤差はあるでしょうが、8~9分前―18:15ごろ―にホームに着かないと着席は困難であることがわかります。

例4. 18:33発の場合

常磐線18:26ごろの様子(発車7分前)

写真9. 18:33発の発車7分前の混雑状況

18:33発の発車7分前では座席を選びたい放題であることがわかります(写真9)。その後、私が眼を離したすきに発車直前になってしまいました。そのときの混雑状況はどうでしょう?

常磐線18:33発発車直前

写真10. 18:33発の発車直前の混雑状況

いつの間にか座席は埋まってしまいました(写真10)。きっと、3分くらい前に座席が埋まったことでしょう。

例5. 18:53発の場合

ラッシュピーク時を外れたはいえ、列車間隔が20分もあり、それなりに混雑すると想定されます18:53発の様子はどうでしょう?

品川18:53発常磐線の発車直前

写真11. 18:53発車2分前の混雑状況

この日は列車の入線が遅く、私も撮影を失念していたため、発車2分前の状況しかありませんでした(写真11)。さすがに発車2分前ですと座席は全て埋まっていますね。

なお、品川で成田行きの案内をする際に、「我孫子経由」と連呼していました。これは我孫子が大都会ということもありますが、品川だと近いホームから総武線経由の成田行きが発車することもあり、総武線を経由しないことを強調するためでしょう。

品川発車時(品川→新橋)の混雑状況

品川発車時の混雑状況を示します(2018年1月に調査)。この日はダイヤが乱れていましたが、調査時間帯全体での本数は維持されていました。そのため、全体感をとらえる際には有益な調査データと確信しています。

品川に停車中の列車

写真12. 品川に停車中の上野東京ライン

品川発車時の混雑データ

まず、品川発車時の混雑状況を示します(表3)。

表3. 品川発車時の混雑状況

夕方時間帯 品川発車上り

この日はダイヤが乱れていました。遅れて前の列車との間隔が空いている列車の混雑が激しく、間隔が詰まっている列車の混雑は比較的ゆるいという現象が見られました。

例えば、17:27発の列車は前列車間隔が17分も空いているために混雑が激しく、17:42発(実際は13分遅れでした)も同様に混雑していました。逆に、17:20発と17:59発(いずれも遅れていました)は前後の列車と比較すると、混雑していませんでした。余談ですが、18:05発高崎線籠原行きは駅の電光掲示板で10両と表示されていました(ダイヤ乱れによる車両運用乱れのためでしょうか)が、実際には15両でした。夕方ラッシュ時のピークに10両編成という暴挙をやらなくて安心しました。ほかの駅ではどのように案内されていたのでしょう?

品川発車時の混雑状況の分析:宇都宮・高崎線

データの整合性が確約されない可能性があるため、このような調査日のデータを1本1本検討することは控えましょう。私の調査していた時間帯全体の本数は通常と同じであったため、全体の平均的な混雑は普段と同じ(混雑した列車と空いている列車があるが、全体としてはそれらの影響はキャンセルされる)と仮定しましょう。また、車両ごとによる混雑のバラつきも普段通りとしましょう。すると、仮想的な列車混雑は以下のようになります(表4)。

表4. 仮想的な混雑まとめ

品川発車時混雑まとめ

※宇都宮線と高崎線の混雑は同等と仮定して、まとめています。東京発車時点での混雑状況(宇都宮線も高崎線も同等の混雑状況)から、この仮定は成立すると判断しています。

宇都宮・高崎線を各車両で見てみましょう。全ての号車で立ちが発生しています。東京や上野を発車した時点と同じく、両端の車両の混雑がゆるいことがわかります。印象としては6号車~11号車だと吊革がある程度埋まる混雑、1号車~3号車、12号車~15号車がゆとりある立ちというところですね。

品川発車時の混雑状況の分析:常磐線

17時台と18時台で傾向が全く異なります。17時台は車両を選ばねば、充分に着席可能なレベルです。一方、18時台になると全ての座席が埋まっています。この例外が18:33発の成田行きです。常磐線の特性上、我孫子から成田線に入るという事実はあまり混雑に影響しません。松戸、柏での降車が多いためです。では、この電車だけが空いている原因は何でしょう?答えはダイヤを見れば簡単にわかります。そう、前の常磐線系統の発車から9分しか経過していないのです。1時間に4本の常磐線でこれは間隔が短いほうといえます。

逆にいうと、18時台でも列車を選べば、上野東京ラインで新橋でも着席可能ということです。具体的には、前列車間隔が10分以内の常磐線の両端各2両(1号車、2号車、14号車、15号車)ならば着席できるということです。

品川断面であれば現在の毎時4本という運転本数は適正値といえましょう。また、「品川」を経由する絶対的な必要性もありません(毎時4本であってもラクに立てる程度のため)。そのため、上野東京ラインの羽田空港直通が常磐線だとしても全く問題ないでしょう。羽田始発だろうと品川始発だろうと、新橋や東京を経由するので大方の利用客には問題ないのです。

東京到着時(新橋→東京)の混雑状況

東京でのE531系並び

写真13. 東京に到着した上野東京ライン(常磐線E531系)

では、1つ進んだ新橋→東京の混雑状況はどうでしょうか。東京到着時の混雑を調査しました(表5)。

表5. 上野東京ラインの東京到着での混雑状況

上野東京ライン 夕方東京到着

号車や列車によって違いはありますが、いずれも混雑しています。具体的には、ドア間の吊革が半分からほぼ埋まっている状況です。

混雑状況の分析

混雑状況を分析しましょう。

・6~13号車が混雑している

おおむねどの列車であっても、座席間の吊革がほぼ埋まっている様子です。逆に、1号車や15号車が空いている傾向にあります。東京発車時は15号車寄りが空いている傾向にありますが、東京到着時点では1号車寄りも空いている傾向にありました。これは、品川・新橋ともにホームの北側(15号車寄り)に出入り口があるため、ここまで乗客が流れ込まないのでしょう。その傾向が品川始発の常磐線、とりわけ18:44発の成田行きに顕著に現れています。川崎方面から直通する宇都宮・高崎線については、その傾向は薄れていますね。この傾向(川崎以南からの乗客が存在していそうな傾向)から、上野東京ラインは東京都心を貫通する流動もあることが読み取れます。

・常磐線、とりわけ中電ではない系統は空いている

常磐線は他の2路線と比べて空いていました。この理由は常磐線方面への利用客が他の2路線と比べて少ないこと、そして本数が少ないがゆえに上野乗り換えが定着していること、が原因として考えられます。ダイヤ改正で夕方時間帯の品川直通が増発されました。このことが定着すると、上野乗り換えは減少するかもしれません、また、18:44発の成田行きについては1号車に空席が見られました。

東京でも座れた電車

写真14. 夕方でも空席のあった常磐線

夕方でも東京から着席可能性の高い穴場列車

「夕方の上野東京ラインに東京から座れるの?」という疑問もあるでしょう。これに対しては、「可能な列車もある」と答えられるでしょう。宇都宮線や高崎線では着席はほぼ不可能(上野などで降車する人を見分ければ可能かな?)、常磐線であれば着席できることもあるというのが答えです。着席可能な電車は18:44発の快速成田行きです。この電車の特徴は以下の通りです。

1) 中距離電車ではない、いわゆる快速電車である
2) 前の常磐線系統から11分しか空いていない

東京→上野の混雑状況の実際

東京に停車中の宇都宮線

写真15. 東京に停車中の上野東京ライン(宇都宮線直通、E233系)

さて、次の区間(東京→上野)では混雑状況はどう変わっているのでしょうか。東京到着時でもそれなりに混んでいました。東京発車時はより激しい混雑になっていると想定できますが、実際はどうでしょうか。

東京発で17:56~18:41について観察いたしました(2017年7月に実施、表6)。夕方のラッシュ時のピークでしょう。

※18:11発の常磐線は7分遅れなっていたので、18:18発と表記いたしました。

表6. 東京発車時点での混雑状況

17.7東京発車時点混雑

・宇都宮・高崎線系統はおおむね吊革が埋まる程度の混雑
 ※一部号車はドア前がぎっしり詰まる程度まで混雑しています。3~10号車に散見されます。

・18:01発は前の宇都宮線から25分の間隔があるためか、混雑は激しい
 ※高崎線はほぼ等間隔ですが、列車によって混雑にばらつきがあります。これは単に夕方ラッシュの最ピークかどうかという違いでしょう。

・系統に関わらず、14号車と15号車の混雑はゆるい(といっても東京時点での着席はほぼ不可能)

・宇都宮線・高崎線と比較して、常磐線系統の混雑はゆるい

このときのダイヤは「上野東京ライン(常磐線)の大増発」が実施された2017年10月ダイヤ改正前のものでした。そのため、夕方ラッシュ時の常磐線は快速のみであり、中距離電車(取手以遠に向かう系統)の設定はありませんでした。

常磐線中電は上野で乗り換えるようにという表示

写真16. 常磐線中電は上野駅での乗り換えと案内する表示(2017年10月ダイヤ改正でなくなった表示です)

上野発車時の混雑状況

高崎線列車上野

写真17. 上野に停車中の高崎線列車

さて、上野東京ラインは上野までやってくると、宇都宮・高崎線系統と常磐線系統に分岐します。その分岐点での状況はいかがでしょうか。

表7. 上野発車時点での混雑状況

上野東京ライン 夕方上野下り

・常磐線の混雑は比較的ゆるい(ただし日暮里や北千住で大量の乗車があることでしょう)

・高崎線の混雑は比較的きつい(宇都宮線よりも高崎線のほうが輸送量は大きいのです)

15号車よりの混雑は比較的ゆるい(赤羽も15号車よりは乗車が少ないでしょう)

・6号車の混雑はきつい(比較的便利なうえ、となりがグリーン車のためでしょう)

・同じ系統で間隔が空くと、混雑は激しい傾向にある

 例1. 18:43発(常磐線)は比較的混雑はゆるいです。
 →1本前の前の常磐線から10分しか空いていないためと考えることができます。

 例2. 18:48発(宇都宮線)は比較的混雑がきついです。
 →1本前の宇都宮線から21分も経過しているためと考えることができます。

コラム.宇都宮・高崎線系統と常磐線系統に見る混雑状況の違い

混雑データから乗車率を計算する

では、東京発車時点と上野発車時点のどちらが混雑が激しい傾向にあるのでしょうか?上野でさらに乗り込みが発生して、上野発車時点でより混雑するのでしょうか?それとも、上野では始発があるために混雑は分散するのでしょうか?前回、東京で調査しました。この乗車ポイントから乗車率に換算し、各列車ごとに東京発車時点と上野発車時点の乗車率を算出しました。この差を線区ごとに層別してみました(興味ないでしょうから、計算の過程を示すのはやめておきましょう)。それが以下の通りです。

宇都宮線:東京発車時点よりも上野発車時点のほうが2.6%増加
高崎線:東京発車時点よりも上野発車時点のほうが4.2%増加
常磐線:東京発車時点よりも上野発車時点のほうが13.1%増加

宇都宮線と高崎線は1.6ポイントの差がありますが、目視による測定であることから、この程度の差は誤差レベルと判断します。一方、常磐線は明らかに数字が異なっています。別のいいかたをしますと、常磐線だけ明らかに傾向が異なっています。このデータをわかりやすい表現に変えると、以下の通りです。

宇都宮・高崎線:東京発車時点よりも上野発車時点のほうがわずかに増加、ただしその変化は大きくない
常磐線:東京発車時点よりも上野発車時点が大幅に増加

宇都宮・高崎線と常磐線の傾向の違いはなぜ?

宇都宮・高崎線は上野での乗り込みが多くないにも関わらず、常磐線では上野での乗り込みが多いのはなぜでしょう?この理由は宇都宮線(または高崎線)が上野に到着した際にわかります。

東京方面から宇都宮線や高崎線が上野に到着すると、そこそこの乗客が降ります。上野付近に帰るのかと思いきや、多くの乗客は10~12番線に向かいます。つまり、上野まで宇都宮・高崎線系統に乗車して、上野で始発の常磐線に乗り換えるのです。宇都宮・高崎線でも上野で乗り込みますが、上野で降りた人が多いので、列車の混雑でみるとそこまで変化しないのです。一方、常磐線が上野に到着しても同様の現象はありません。これは、常磐線の上野始発が多くて東京や品川からの直通本数が不足していることを意味します。

夕方ラッシュ時の混雑状況のまとめ

夕方ラッシュ時の混雑状況を区間ごとにまとめます。

データの加工による混雑傾向の分析

上で夕方時間帯の上野東京ラインの混雑を調査しました。品川到着から上野発車までの各停車駅での実態調査です。
※具体的な日付は異なりますが、傾向を確認できるということでご了承ください。

まずは混雑状況のまとめです。生データを混雑率に換算し、その混雑率に対応する混雑ポイントも算出いたしました(表8)。

表8. 各駅発車時点での混雑状況のまとめ (東京断面18時台目安)

上野東京ライン 夕方混雑まとめ(川崎~上野)

常磐線の混雑が宇都宮・高崎線よりもゆるいことがわかります。また、常磐線は上野での乗り込みが目立ちますが、宇都宮・高崎線ではデータ上目立ちません。その答えは東京から宇都宮・高崎線に向かう列車が上野に着いたときにわかります。上野で多くが降ります。その人たちについていきますと、多くが常磐線のホームに向かいます。つまり、品川や東京で宇都宮・高崎線に向かう列車に乗り込み、上野で常磐線に乗り換えているのです。このことは見かたを変えると、常磐線直通が少ないために、上野以南で宇都宮・高崎線列車が常磐線の乗客ぶんの負担を強いられているとも解釈できます。

では、もっと詳しく混雑状況を見てきましょう。宇都宮・高崎線と常磐線で異なるので別に記しましょう。

宇都宮・高崎線の混雑状況の詳細

夕方の東京に停車中のE231系宇都宮線

写真18. ここ東京で宇都宮線系統はかなり混雑する

1) 吊革の1/4が埋まった状態で品川に到着

2) 品川-新橋:吊革の半分が埋まった状態で、帰宅客を乗せて走る

3) 新橋-東京:吊革の3/4が埋まった状態で、けっこう混んでいる感覚。

4) 東京で大量の乗客を乗せて、吊革が埋まった状態で東京を発車。編成中央部分の車両ではドア付近が圧迫される。一方、先頭車は吊革が半分程度埋まる程度の混雑のこともある。いずれにせよ、先頭車であれば若干すいている。

5) 上野で降りる客がいる一方、乗車する人もいる。そのため、上野前後で混雑状況は変わらない

常磐線の混雑状況の詳細

1) 品川発車時点では座席が埋まり、ドア付近に2人程度の立ちが生じるレベル

2) 吊革が半分も埋まらない状態で東京に到着。常磐線系統が10分程度で連続して到着する場合は、進行方向後ろ寄りの座席が空いていることもある。

3) 東京で吊革の3/4程度が埋まる。東京発車時点でも宇都宮・高崎線に比べて混雑はゆるい

4) 上野で吊革が埋まる。上野ではドア付近の圧迫は見られない。でも、次の日暮里で池袋・新宿方面からやってきた乗客で大量の乗車がある…。
※宇都宮・高崎線はダイレクトに新宿に直通しますが、常磐線にはそれがないので山手線から乗り換える乗客は多いです。

仮想的な乗車記にまとめてみる

これを簡単な仮想的な体験記にまとめてみましょう。誰しも「自分ごと」に置き換えますと、わかりやすいでしょうから(やさしー)。

私は東京から高崎線沿いの自宅に帰る。いつも仕事は18時に終えるので、18時から19時の間の電車に乗る。いつも通り、高崎線の電車がやってきた。後ろよりはやや空いているものの、それでも吊革の半分が埋まる状態である。これでは着席は困難だ。私を含めて多くの乗客が乗り込む。発車までは時間がある。これは東京で時刻調整しているためなのだろう。私は東京から乗るので気にならないが、品川や新橋などから続けて乗っている人にとっては愉快なものではないだろう。

発車すると吊革はほぼ埋まった状態になる。一部の車両はドア付近が圧迫されている。走ること5分、上野に到着した。ここで多少の降車はあるものの、同程度の乗車があり、混雑は変化ないまま発車する。常磐線沿いに住む同僚も上野で降車して上野始発の常磐線に乗り換えたようだ。

突然、肩を叩かれた。誰と思って振り向くと、品川で勤務している旧友だ。『品川で座れるのでは?』と疑問をはさんだら、品川では座れないことが多いのだそうだ。普段は自宅の最寄駅まで苦痛の時間だったが、今日は旧友と近況報告で盛り上がった。

夕方の混雑状況からダイヤを考える

では、ここに示した混雑状況からどのようなダイヤが適切か考えてみましょう。宇都宮・高崎線系統と常磐線系統にわけて考えます。

宇都宮・高崎線のダイヤを考える

私の思う夕方ラッシュ時の理想的な混雑は120ポイント(一部区間・車両では140ポイントまで許容)までというものです。定性的な理解では、座席間の吊革が半分程度埋まるというものが理想ということです。ただし、1駅程度であればこれを超えても構わないでしょう。宇都宮・高崎線に当てはめますと、上野-尾久は混雑するけど尾久で大量に降りるということです。
では、実際の混雑状況と理想の混雑状況のズレはどれほどなのでしょうか。

私の調査結果、読者さまからのコメント(補足情報として活用させていただきます)から現実をとらえて、理想の混雑状況に近づけるための方策を考えてみましょう。

その内容は
a)「宇都宮・高崎線では赤羽と大宮での乗り込みが多い」という趣旨のコメント

→上野からの乗客が途中駅で降りたところで、途中からの乗り込みが多いため混雑が続くことがわかります。この乗客が土呂や宮原(どちらも大宮の次の駅です)で大量に降りるとしても、上野から混雑が続くことは容易に想像できます。ということは、上野発車時点での混雑はある程度抑える必要があります。

東京発車時点(上野発車時点でも同等の混雑です)で毎時4本設定される宇都宮・高崎線の混雑率は120%程度と計算されます。混雑率は本数に反比例しますから、混雑率を90%とするには毎時6本が必要ということです。

ただし、(上野始発の列車を単純に東京始発にして)東京断面で毎時6本にするだけですと、上野以北の輸送力は全く向上しません。そのため、上野東京ラインの列車の他に毎時1~2本程度は上野始発、あるいは受益者の多い東京始発を設定するのが良いでしょう。

b)「宇都宮線の通勤快速は小山まで立ちが発生している」という趣旨のコメント

通勤快速は毎時1本では不足気味ということでしょう。毎時1本だから乗客が集中するのです。それを解消するには速達列車を毎時2本運転して乗客を分散すれば良いでしょう。もちろん、15両編成での運転です。

これらをまとめますと、宇都宮・高崎線は快速毎時2本、普通毎時4本というのが理想というものです。この他に、東京始発を各毎時1本確保すれば、着席サービスも実現できます。湘南新宿ラインの本数を増やせば、赤羽での乗り込みが減少することでしょう。赤羽での乗車の多くは、新宿・池袋から宇都宮・高崎線に向かう人が埼京線に赤羽まで乗車し、赤羽から宇都宮・高崎線に乗り換える人と想定できます。湘南新宿ラインの本数が増えれば、赤羽で埼京線から乗り換える人が減少するのです。

常磐線のダイヤを考える

次に、常磐線について考えてみましょう。東京-上野を見ると、毎時4本で混雑ポイント130ポイントです。上野での乗り込みを考慮すると、ここでの混雑ポイントを100ポイント程度にしたいところです。このことを考えると、東京-上野では毎時6本欲しいところです。また、ここまで増発すると、宇都宮・高崎線系統から上野始発の常磐線に乗りかえる層が直通列車にシフトすることも考えられます。このことも考慮すると、東京-上野は毎時8本必要といえましょう。

現在、上野断面では毎時11本運転されていますが、この全てが上野を通る必要はありません。常磐線が新宿に直通すれば、東京からの毎時8本と新宿からの毎時4本(毎時3本では少なすぎて認知されないと判断しました)という組み合わせが良いでしょう。常磐線の新宿直通の計画など全くない現在は残りの毎時3本が上野始発というのが現実的でしょう。

まとめにかえて

JRが全額負担して建設した上野東京ライン。新たに線路を敷いて、山手線や京浜東北線の混雑緩和・遠距離通勤客への便宜をはかったことは非常に称賛されるべき施策です。しかし、その施設がじゅうぶんに活用されていないようにも感じます。少しでも便利なダイヤに変更し、さらに便利な道具となってもらいたいものです。鉄道は利用されてなんぼなのですから。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. tc1151234 より:

    (利根川一郎さんからのコメント)

    私は東北本線(宇都宮線)ユーザーです。
    下りに乗ると、記事のとおりです。赤羽で増えて、浦和、新都心で少しずつ減ってきます。大宮は、降りる客も多いですがそれ以上に乗ります。ここが(土呂まで)最混雑区間です。
     通勤快速ですが。大宮からは、久喜・古河・小山が停車駅です。普通と同じく大宮での乗客が多いです。上野あるいは赤羽から乗車した客は大半が久喜で降りてしまいます。古河までの人もいますが。その先は大宮からの乗客です。つまり入れ替わりです。
    都内から小山までの乗客はほとんどいません。従って通勤快速を増やすことには反対の立場ですです。小山は新幹線があるので。

    ※このコメントは過去記事にコメントいただいたものを移設したものです。

    • tc1151234 より:

      利根川一郎さま、コメントありがとうございます。弊ブログ移設作業に伴って、返信できていませんでした。

      さて本題ですが、通勤快速を増やす場合、蓮田に停車するのが良いと考えています。また、私の案では通勤快速は純増としています。そのため、これと引き換えに普通電車の減便はありません。したがいまして、普通停車駅についてもデメリットはありません。蓮田に停車させるのであれば、近距離客の一部は通勤快速に移行して普通電車の混雑はより緩和されるはずです。

      新幹線があるため通勤快速増発に反対されていると見受けましたが、将来的には新幹線は札幌まで伸びます。これによって、(若干かもしれませんが)新幹線は乗客が増えます。新幹線の近距離客の穏やかな在来線への誘導や自動車への対抗も含めて、在来線もスピードアップするほうが良いというのが私の考えです。