宇都宮線のダイヤ改正(2021年3月)の考察

記事上部注釈
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日中時間帯の減便や快速停車駅の変更、通勤快速の廃止という変化がある、宇都宮線のダイヤ改正。では、実際の変化はどのようなものなのでしょうか。実際の時刻表から詳細に解析しました。

E231系(上野)

写真1. 上野を発車する東海道線直通(2018年に撮影)

宇都宮線の2021年3月ダイヤ改正の概要

宇都宮線のダイヤ改正の概要を以下に示します。

・日中時間帯を中心に上野発着便の本数を削減
 ※上野東京ラインに直通するのではなく、単純な減便です。プレスリリースでは朝ラッシュ時も減便と記されていました。

・快速を東大宮に停車

・通勤快速を快速ラビットに変更し、通勤快速を廃止

・最終電車の行先を変更

このような変化があります。それぞれの変更点の背景を含めて解析しましょう。

日中時間帯を中心に上野発着便の本数を削減

E231系(赤羽)

写真2. 上野発は赤羽で乗りこむ

宇都宮線は長い間、上野を起点に運転されていました。しかし、2015年3月14日に「上野東京ライン」が開業し、多くの列車が東京・品川直通になりました。当然、利用客は東京・品川直通に集中します。そのため、上野発着便は相対的に空くことになりました。2015年ダイヤ改正以降、上野発着は大宮以北の運転頻度確保の意味合いが強い側面がありました。そして、2020年以降に新型肺炎ウィルスの脅威が語られ、鉄道利用客が減少する傾向にあります。このような傾向にあって利用の悪い上野発着が削減されるのもやむをえない部分があります。その結果、日中時間帯運転の上野発着の毎時1本が削減されます。

ただし、利用客としては、15両編成のままで減便するのではなく、10両編成で運転本数を維持することを模索してもらいたかったです。

日中時間帯の1時間当たりの運転本数は以下の通りです。

・改正前:快速(新宿経由)1本、普通(新宿経由)1本、普通(上野東京ライン)3本、普通(上野発着)1本の合計毎時6本

・改正後:快速(新宿経由)1本、普通(新宿経由)1本、普通(上野東京ライン)3本の合計毎時5本

快速の東大宮停車

上野発着は大宮以北の運転頻度確保のためという意味が強かったですが、経営状況の悪化でやむなく削減されることになりました。

こうすると、大宮以北の本数が減少します。ところで、快速通過駅の東大宮は利用がかなり多く、隣の蓮田と同等かそれ以上の乗降客数があります。そんな東大宮の利便性を低下させるのは得策ではないでしょう。そこで、日中時間帯(上野発着が削減される時間帯です)に多く運転されている快速を東大宮に停車させ、東大宮の利便性を確保することにしました。これが東大宮に快速が停車した理由です。

そのため、東大宮に限っていえば、日中時間帯の停車本数は変わらず、上野発着の毎時1本が新宿経由に振り替えられたことになります。

通勤快速の快速への変更

宇都宮線では夕方から夜間にかけて通勤快速を運転しています(休日は快速ラビット)。通勤快速は遠距離通勤客の分離という意味があり、大宮-久喜間ノンストップで運転されています。しかし、近年の都心回帰の動きに合わせたのか、東大宮と蓮田に停車する快速ラビットに変更されます。

なお、通勤快速から快速ラビットに変更されることにより、尾久を通過しますから、停車駅は1つ増えるだけです。

最終電車の行先の変更

新型肺炎ウィルスの脅威が語られたことによる、在宅勤務の定着・深夜までまたがる飲食の機会の減少などにより、深夜時間帯における需要が減少しています。特に、最終電車の繰り上げは線路の保守の機械化によるコストダウンにも直結します。そのような背景から、多くの路線で最終電車が繰り上げられます。

とはいえ、宇都宮線最終の上野発はもともと23:38と早いほうでした。常磐線快速の上野発が0:51だったことを合わせて考えると、いかに早いかがお分かりいただけると思います。とはいえ、最終電車の行先が宇都宮と遠く、宇都宮着が1:25とかなり遅い時間に及んでいたのも事実です(さきほどの常磐線は松戸行きと短距離しか走りません)。そこで、最終宇都宮行きが小金井行きに短縮されました。小金井到着時間は1:01とほぼ1時前に到着します。そして、この最終電車は従来の上野始発から東京始発に変わっています。東京付近から帰宅する人や同区間で山手線や京浜東北線に乗る人にとっては朗報です。

なお、最終電車以外はほとんど行先や時刻は変わりません。後の章で示しますが、「密」を避けるためか、基本的に深夜時間帯の減便はありません。

2021年3月ダイヤ改正前後の運転本数の解析

E231系(池袋)

写真3. 池袋から宇都宮線に向かう人も多い

では、実際の増減はどの程度なのでしょうか。ダイヤ改正前とダイヤ改正後の発車時刻表を作成してみました。

下り列車の解析:上野からの解析

下り列車について上野の発車時刻表から、増減を見てみましょう(表1)。

表1. 上野の発車時刻の比較

宇都宮線下り(上野発車時刻)

赤字は快速、紫字は通勤快速、簡単のために行先は省略
※上野始発は下線で表記

基本的に日中時間帯以外は減便はなされていません。日中時間帯は東京発の宇都宮線、高崎線ともに20分間隔に統一されました(ダイヤ改正前は両線ともに10分、20分、30分間隔の組み合わせの毎時3本)。これは上野始発がなくなり、30分サイクルから20分サイクルに変更されたことの効果でしょう。具体的には毎時08分発の始発、毎時25分の上野東京ラインが、毎時15分の上野東京ラインに統合された形です。

微妙に発車時刻にずれがあるのは、JR東日本らしさが出ており、微妙に使いずらいのも変わっていません。

ところで、宇都宮線は上野を通る便ばかりではなく、湘南新宿ラインも運転されています。知恵のある人は、「大宮まで高崎線で向かい、大宮から宇都宮線に乗りましょう!」と考えることでしょう。そのような人のために、大宮で宇都宮線に連絡する高崎線も含めて示します。

表2. 上野の発車時刻の比較(大宮で宇都宮線に連絡する高崎線を含む)

宇都宮線下り(上野発車時刻、接続アリ高崎線含む)

赤字は快速、紫字は通勤快速、簡単のために行先は省略
※上野始発は下線で表記
※高崎線は斜字で表記

日中時間帯に限っていえば、高崎線は宇都宮線と連絡していませんでした。赤羽や大宮でほぼ同時に発着していました。赤羽も大宮も別ホームの発着ですから、同時発着ではのりかえられません(大宮の配線を工夫すれば乗りかえが可能なのでもったいないと感じてしまいます)。ダイヤ改正後は宇都宮線の快速に乗りかえられます。具体的な乗りつぎパターンは以下の通りです。

(例)上野14:05 (高崎線) 大宮14:31/大宮14:41 (快速宇都宮行き)

このような乗りつぎパターンが形成されるため、日中の下りに上野から出る場合、宇都宮線の快速停車駅に限っていえば、乗車チャンスは減少していません。

なお、ダイヤ改正後の上りは湘南新宿ラインは普通は大宮で同時発車のため、赤羽で急げば乗りかえ可能(乗りかえ時間2分)なパターンが多いです。湘南新宿ライン快速は大宮で宇都宮線の普通に連絡するため、乗車チャンスは増加しません。

なお、日中時間帯の快速は下りは普通と緩急結合せず、上りは大宮で先行の普通(宇都宮線→上野東京ライン)と連絡します。大宮で同方向の緩急結合になっているのがやや残念です。これが高崎線と連絡という形態であれば、高崎線・宇都宮線の両方向から東京・新宿への乗車チャンスが増加していました。

20分サイクルの上野東京ラインと30分サイクルの湘南新宿ラインを重ね合わせている以上、このように無理が発生してしまうのです。

なお、夕方ラッシュ時以降の本数は増減はなく、下りの列車削減は主に日中時間帯に集中していることがわかります。また、最終の小金井行き(ダイヤ改正前は宇都宮行き)は上野始発から東京始発に変更されています。深夜時間帯の東京→上野は本数が少ないので、もう少し東京始発の割合を増やしても良いでしょう。

上りの解析:久喜の発車時刻から

今度は上り列車を解析してみましょう。大宮以北でもトップクラスの利用客数を誇る久喜駅で考察します。

表3. 久喜駅の発車時刻表

宇都宮線上り(久喜発車時刻)

※無印は上野東京ライン、上は上野行き、新は湘南新宿ライン、簡単のために最終的な行先は省略
赤字は快速、紫字は通勤快速

久喜断面で見ると、日中時間帯の毎時30分前後の上野東京ラインが削減されていることがわかります。そのかわり、毎時15分前後の上野行きは東京・品川直通に変更されています。毎時30分前後の普通は古河で快速を待つ列車であり、そこまで利用が多くなかったのかもしれません。そのため、削減しても最も影響が少ないと判断されたのでしょうか。

また、朝ラッシュ時には7:37発の普通上野行きが削減されています。小金井発6:58上野着8:33の列車です。そのため、大宮断面で7:55発上野行き(高崎線)、7:59発熱海行き(高崎線)、8:04発品川行き(宇都宮線)、8:08発上野行き(高崎線)と、朝8時前後に5分も間隔が開いています。いくら上野行きが空いている傾向にあるとはいえ、朝ラッシュ時ピーク60分間に減便するのはどうかと思います。

ダイヤ改正前の上野方面の列車は9:29~10:02と33分のダイヤホールがあり、これはダイヤ改正後も変わっていません。確かに9:49の湘南新宿ラインがあり、この列車は高崎線からの上野東京ラインに接続しますが、それでも日中時間帯に入る前に20分のダイヤホールが存在する事実は隠せません。

このほか、夕方の18:17発上野行きが削減され、22:12発上野行きが新設されています。これはどちらかというと、運用の都合で4時間後ろにシフトしたと解釈することができます。

ダイヤ改正前後での所要時間の比較

E233系(宇都宮)

写真4. 宇都宮からの所要時間はどうだろう?(宇都宮で撮影)

では、所要時間を比較してみましょう。朝ラッシュ時、日中時間帯、夕方ラッシュ時に分けて記します。

朝ラッシュ時上りの所要時間比較

朝ラッシュ時上りの所要時間を比較してみましょう。朝ラッシュ時上りには決まったダイヤパターンはありませんから、上野東京ライン、湘南新宿ラインを各1本選択して比較することで、全体的な考察としましょう。

本当であれば、ラッシュ時ピーク60分間に設定されている宇都宮始発の上野東京ラインでダイヤ改正前後の所要時間を比較したかったのですが、ラッシュ時ピークの上野東京ラインに宇都宮始発はありません(宇都宮は湘南新宿ラインか上野行きだけ)ので、小金井始発での比較です(表4)。

表4. 宇都宮線朝ラッシュ時の所要時間比較

宇都宮線朝比較

みごとに所要時間は変わっていません。朝ラッシュ時のダイヤを変更するのはなかなか困難で、時刻を変えなかったということがわかります。

日中時間帯の所要時間の比較

まず、気になるのは、快速が東大宮に停車することにより、どの程度スピードダウンするかということです。12時台の上下列車の主要駅の時刻をダイヤ改正前後で並べてみました(表5)。

表5. 日中時間帯の湘南新宿ライン快速の運転時刻の推移

宇都宮線日中時間帯(快速比較)

下りについては、大宮→久喜で2分所要時間が増加していますが、新宿→大宮、久喜→小山でそれぞれ1分ずつ短縮しているので、巨視的に見ると所要時間は伸びていません。これは、従来から久喜手前で先行の普通につかえるので、速度を出していなかったためです。従来ゆっくり走っていたぶんの余裕を東大宮停車時間に充当したと解釈できます。

上りについては、小山から大宮まで所要時間が2分増加しています。また、大宮から新宿まで所要時間が1分増加しています。ただし、宇都宮→小山で2分スピードアップしていますから、全体での所要時間増加は1分です。

このように、東大宮停車による所要時間は0分~1分程度と見積もられ、東大宮停車による所要時間増加は最小限に抑えられていることがわかります。

ここまでは特定の列車の所要時間という「虫の眼」で確認しましたが、もう少し全体的に眺めた「鳥の眼」ではどうでしょうか。平日12時台に東京を発着する宇都宮線の東京から(東京まで)の所要時間をまとめました(表6)。

表6. 平日日中時間帯の東京から(まで)の所要時間一覧

宇都宮線日中比較(鳥の眼)

ダイヤ改正後、ことごとく所要時間が増加しています。減便したうえで所要時間増加というのは利用客からしてみると最悪の形態です。これは駅間の所要時間増加よりも上野や大宮での時刻調整が影響しています。特に、大宮での停車時間増加が目立ちます。(上野を通る)毎時3本の普通に対し、大宮以北では毎時2本の湘南新宿ラインが挿入されます。何も時刻調整しないと20分間隔の部分が生じてしまいます。そこで、毎時3本の上野東京ラインのうち2本を大宮で時刻調整することで、上野東京ラインどうしの運転間隔を17分~24分に設定しています。上野東京ラインどうしの運転間隔が17分程度の箇所には湘南新宿ラインを挿入せず、その他の箇所に湘南新宿ラインを挿入しています。そのため、大宮以北では20分の穴は空きません。

このような工夫は見られますが、この工夫の負の側面に所要時間の増加があります。今回、大宮で時刻調整する列車が多いせいでこのように所要時間が増加してしまっています。

なお、上りの宇都宮・小山→東京の所要時間がむしろ短縮されているのは、日中時間帯に古河で快速を待合せるパターンが消滅しているためです(下りは上野発着が久喜で待ち合わせていたため、本表には影響しない)。

毎時5本レベルとなると、緩急接続を行うよりも、待ち合わせがないことによる有効本数の増加のほうが良いのかもしれません。今回のダイヤ改正では上りの大宮以外では緩急結合はなく、そのような意味で都合の良いダイヤと評することもできます。

しかし、せっかく各駅で毎時5本の乗車チャンスを確保しても、大宮での接続が貧弱だと各方面の有効本数は少ないままです。大宮での接続を考慮することも考えるべきでしょう。

夕方ラッシュ時の所要時間

夕方ラッシュ時の所要時間を見てみましょう。最も気になるのは、通勤快速から快速に変更された列車の所要時間です。18時台の通勤快速(ダイヤ改正後は快速)の運転時刻を比較しましょう(表7)。

表7. 通勤快速から快速に変更される列車の運転時刻の比較

宇都宮線夕方比較

運転時刻はほぼ誤差レベルであり、特にスピードアップもスピードダウンもありません。つまり、通勤快速から快速への変更で(所要時間的には)デメリットはないということです。乗降客の少ない尾久を通過し、乗客の多い東大宮と蓮田に停車することから、乗客の集中が予想されます。とはいえ、通勤快速は上野始発であり、乗客の多い品川・新橋・東京を通らないので、そのような意味では乗客が分散されるでしょう。

宇都宮線の2021年3月ダイヤのまとめ

朝ラッシュ時(1本)、日中時間帯(毎時1本)の上野発着が削減された宇都宮線。そのフォローとして快速通過駅で最も利用の多い東大宮については快速が停車することになりました。この停車による所要時間増加は最小限に留めた印象があります。

一方、大宮以北の各駅での待ち時間を均等にするため、上野や大宮で時刻調整が発生しています。そのため、単純に20分待たされるケースは少ないですが、負の側面として時刻調整による所要時間増加が発生してしまっています。

本来であれば、このような待ち時間増加が見込まれるダイヤ改正の場合は、ダイヤをうまく組んで所要時間をそのままにする、高崎線との連絡を工夫して乗車チャンスを可能な限り維持する、などの工夫をしてしかるべきものです。しかし、そのような工夫をあまり行わず、単に不便になってしまっています。

また、朝や夕方の本数はそれなりに維持され、新型肺炎ウィルスの脅威が語られたことによる利用客減少の中で努力した跡も見られます。

今後は同じ本数であっても、所要時間短縮や接続の確保によって、乗客サービスの向上と労働力削減(=所要時間短縮による労働時間削減)を両立してもらいたいものです。

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大宮での接続を改善する方法を考えてみました。

大宮駅改良による乗換利便性向上

宇都宮線や高崎線のダイヤパターンについてまとめています。

宇都宮・高崎線(ダイヤパターン紹介)

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コメント

  1. ラベルの塔 より:

    1時間に6本の上野東京ライン、4本の湘南新宿ラインを5本の宇都宮線、5本の高崎線に割り振っている時点でどこかしらに歪みが生じるからな…
    所要時間と北側路線の等間隔と南側路線の等間隔、全てを満たそうとするなんて無理だからな…
    JR的には南側路線の等間隔を最優先にしているんだろうな

  2. tc1151234 より:

    ラベルの塔さま、コメントありがとうございます。ご指摘の通り、JR東日本さんはダイヤのサイクルの合致に無頓着な印象を受けます。

    個人的な感想ですが、JR東日本は本数より両数を優先しており、利便性確保の優先順位が低いように感じてしまいます。利用者的には短編成・高頻度化政策がありがたいものです。