横須賀線の混雑状況(西大井→品川、朝ラッシュ時現場調査結果)

記事上部注釈
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武蔵小杉開業後、混雑が悪化したといわれている横須賀線。しかし、統計上、輸送力に湘南新宿ラインを含まないなど不可解な点もあります。オールロングシート車が導入されようとしている現在、混雑状況はどうなのでしょうか。実際に観察した結果、意外な事実が見えてきました。

E217系(品川)

写真1. 横須賀線電車が品川に停車中の様子

横須賀線(西大井→品川)の平日朝ラッシュ時の混雑状況

以下、長い文章を読みたくない人のために、簡単に結論をまとめます。

・最も混むのは品川を8:20~8:29に通る電車である
・ピーク時60分の混雑率はだいたい150%である(公式の統計196%は誤り、理由は記します)
・比較的空いている車両は東京(千葉)より3両である

混雑調査の概要

簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。

弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。

表1. 混雑ポイントの概要

乗車ポイントの概要

せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。

混雑ポイント120ポイント相当

写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント140ポイント相当

写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント160ポイント相当

写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)

今回は、最も混雑するであろう、西大井→品川を観察しました。西大井までは住宅地にありますから、西大井までは乗客を集め、品川はビジネス地区ですので、品川で降りるためです。

横須賀線の混雑調査結果とその分析

生データを示してから、その分析を行います。

混雑の生データ

生データを示します(表2)。

表2. 横須賀線の混雑状況(朝ラッシュ時、西大井→品川、生データ)

横須賀線の混雑状況(朝ラッシュ時、西大井→品川、生データ)

混雑していますが、公式発表の190%程度までの混雑ではないことがわかります。今回の調査ぶんからそのまま抜き出すと、混雑率は143%程度とそこまで混雑していないことがわかります。8:00~8:40の40分間の列車の混雑率はだいたい160%です。その前後10分間も含めたピーク時の混雑率は149.2%です。少しだけピークを外すととたんに混雑がマシになることがわかります。

混雑状況の分析

生データだけ示しておしまい、というのは不親切に過ぎましょう。そのため、分析してみます。まずは、時間帯ごとの分析です(表3)。

表3. 横須賀線の混雑状況(朝ラッシュ時、西大井→品川、時間帯別)

横須賀線の混雑状況(朝ラッシュ時、西大井→品川、時間帯別)

品川発車時刻で10分ごとに区切りました。7:50~7:59が空いていて、8:00~8:09がやたらと混んでいます。これは続行する2本(7:54発と8:00発)の混雑が大きく異なることに起因します。通常はこの2本がここまで混雑が異なるとは思えませんから、7:50~7:59が142.5%、8:00~8:09が149.1%と考えるほうが自然です。すると、8:20~8:29が混雑のピークとなることがわかります。つまり、品川8:22発(横浜7:59発)と8:29発(横浜8:05発)が最混雑列車ということです。

また、ラッシュピーク時を過ぎると、急激に混雑が緩和することもわかります。このように前後時間帯の混雑がある程度ゆるいのは、(首都圏基準ですが)まだ輸送力にゆとりがある路線の傾向です。輸送力にゆとりがない場合は、ピーク時間帯前後に通勤時間をシフトする乗客も現れて、これらの時間帯も混雑するためです。

号車ごとの混雑状況

次に、車両の位置(号車)による混雑の違いを見てみましょう(表4)。

表4. 横須賀線の混雑状況(朝ラッシュ時、西大井→品川、号車別)

横須賀線の混雑状況(朝ラッシュ時、西大井→品川、号車別)

簡単ですが、以下の傾向にあります。

・9~11号車(東京・千葉より3両)が空いている
・最も混んでいるのは、増結1号車~2号車である

つまり、真ん中よりやや後ろよりの車両は混んでいて、前の車両は空いているということです。端部の車両が空いていそうですが、一番後ろの車両はそこまで空いていません。一方、前の車両はやや空いています。

横須賀線で通勤する場合は8:20~8:29ごろに品川を通る電車(=8:00ごろに横浜を通る電車)を避けて、なおかつ9号車から11号車に乗ると良いことがわかりました。

公式の混雑率と今回の調査結果の違い

今回の調査から、ピーク時間帯を7:50~8:50としましょう。この間は10本運転されていて、私の実感では混雑率は150%(座席前の吊革が埋まり、ドア部分では圧迫が生じる、車内中ほどは若干の余裕がある)です。一方、公式発表では196%となっています。この違いを考察しましょう。

湘南新宿ラインを利用する場合、運賃計算では品川駅を経由することになっています。そのため、湘南新宿ラインを利用する人も横須賀線の電車を利用するという建前になっています。この時間帯に湘南新宿ラインの普通は3本運転(※)されています。建前上は10本しかありませんが、実質上は13本あります。これをカウントすると、混雑率は150%となります。これは、私が実際に見て確認した混雑状況と一致します。横須賀線利用客の一部は湘南新宿ラインの列車に乗っているのに、湘南新宿ラインはないものとして統計がとられているのです。多くのサイトでは現地を見ずに、基本的な知識を欠如して状態で書かれているので、注意しましょう!

※湘南新宿ラインの快速は東海道線という建前なので、横須賀線の本数には入りません。ただし、東海道線の川崎→品川の本数には湘南新宿ラインの快速は計上されていません。これも東海道線の混雑率が実態よりも高い数字を示す材料になっている可能性があります。

ダイヤ案を考える

横須賀線はピーク60分の混雑率は150%であり、ピーク時40分に絞ると160%に達します。それでいて、他の路線よりも本数が少なく、品川発7:50~8:49に10本しかありません。単純計算で6分間隔でしかありません。多くの路線は3分以下の間隔で運転されているにも関わらずです。この理由を考察してみましょう。

よく言われるのは、横須賀線の線路は湘南新宿ラインや各種ライナーなども走っているため、限界ということです。そこで、今回調査した列車の前後1本まで含めて、間にはさまる列車をカウントしてみます。わかりやすくするために、武蔵小杉の発車時刻も示します(表5)。

表5. 横須賀線の線路使用状況(朝ラッシュ時)

横須賀線の線路使用状況(朝ラッシュ時)
※おはようライナー新宿はライナー新宿と表記

現在の運転間隔を3分とすると、ほとんど増発余力はありません。現在、成田エクスプレスはがら空きなので、始発駅を小田原に変更して、直前の湘南ライナー1本を廃止する程度しか考えられません。それでも、武蔵小杉断面で7:35、8:19と8:53しか設定できません。7:32~8:56の間を2.5分間隔可能とすると、この時間帯は4本増発できます。さきの増発3本と合わせると、7:32~8:56の間は7本増発できます。すると、13分間隔というのが妥当です。これは、相鉄の新宿直通の本数(おおむね毎時4本)と一致します。また、湘南ライナーの減便が不可能な場合は16分間隔となります。いずれにせよ、この程度の運転間隔では横須賀線の増発は不可能ということです。

ただし、相鉄の新宿直通が開始されると、相鉄-都心の客の一部がシフトします。言いかたを変えると、横浜で相鉄から横須賀線や湘南新宿ラインに乗る人が減ります。そのぶんだけ横須賀線や東海道線の混雑が緩和します。現在は相鉄の新宿直通でわずかに混雑が緩和されるのを期待するしかありません。

また、他の方策として湘南ライナーの定員増加と引き換えに湘南ライナーを減便する選択肢もあります。現在、当該の時間帯に湘南ライナーは3本運転されていて、2本が215系10両、1本が185系7両です。これをオール2F建て15両編成(普通車は転換クロスシート)とする手があります。この車両の定員は1272名と予想されますので、現在の3本の定員2444名を満たすためには2本で良いことになります。具体的には、品川8:40着を削減するのです。これを行っても、相鉄の新宿直通を13分間隔で運転することしかできません。

根本的には、武蔵小杉-蛇窪の2分5秒間隔を実現させることです。15分サイクルにライナーを1本(新宿行きと東京行きを交互)、横須賀線を3本、湘南新宿ラインを2本、相鉄の新宿直通を1本とすれば、混雑率は150%から125%と緩和して、ピーク時でも135%とだいぶ楽になりましょう。

こちらもチェック!関連リンク

・朝の混雑はわかった!じゃあ、夕方の混雑はどうなの?
横須賀線の混雑状況(夕方ラッシュ下り、品川→西大井、現場120分調査)

・並行する東海道線の朝の混雑はどうなの?
東海道線の混雑状況(平日朝ラッシュ時、川崎→品川、現場調査)

・横須賀線の混雑データはどうなの?(以下のリンクは混雑調査のリンクもあります)
横須賀線(混雑基本データ)

※それぞれ別ウィンドウで開きます。

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コメント

  1. 豆鉄砲 より:

    初めまして。
    調査と分析、興味深く拝見させていただきました。

    当方は仕事の関係で横須賀線を利用することがありますが、朝の最混雑時間帯は武蔵小杉でホームの真ん中の車両を中心に扉付近がかなり圧迫して押し屋も活躍していますので、前寄りと後寄りの車両が多少余裕があることを考慮しても混雑率が150%程度しかないことはまず考えにくいです。

    下記のいずれかの可能性は考えられませんでしょうか?
    ・調査された日はたまたま相鉄などの他の路線が抑止していて普段より流入乗客が少ない
    ・幅広車なので車外からだと少し余裕があるように見えて過少計測してしまっている

    また、横須賀線の最混雑時間帯は品川到着時であれば7時40分頃から8時40分頃となりますので、調査された時間帯は10分程度ピークからずれていますね。

    • tc1151234 より:

      豆鉄砲さま、コメントありがとうございます。

      コメントいただいたのは、まさに利用の実感と全体の混雑の違いを示している、という典型例と思います。今回の調査でも混雑率182%に達した車両があり、この車両については、豆鉄砲さまの実感と一致していることと思います。しかし、車両の位置や列車の時間帯では余裕があることも事実です。これをならすと本文中の混雑率になります。いろいろな路線の混雑を見ていますが、正直肩すかしを食らった(190%程度までは混んでいない)のが私の感想です。

      ただし、私の混雑調査はあくまでも個人の趣味で行っているだけですので、日間誤差も当然ありますし、15両編成の先頭部はなかなか見るのは難しいです。その点は趣味の領域である以上、限界もあります。そのため、データの正確性に対する考察よりも、傾向を見てもらうためのデータとしてご活用いただくと幸いです。

  2. どんまいける より:

    西大井で調査するなら、湘南新宿ライン普通のデータも調べて欲しかった
    そうすれば混雑率の嘘もさらに暴けたかもしれないのに。

    • tc1151234 より:

      どんまいけるさま、コメントありがとうございます。

      確かに西大井で調査すれば良かったですね。このとき私は品川到着時に調査していましたので、湘南新宿ライン普通の混雑は見られませんでした。どこかのタイミングで大崎到着時(=西大井では通過する快速も確認できる)の混雑を調査したいものです。