ベルギーのブリュッセルと、オランダのアムステルダム。この間はユーロスターという高速列車で直結しています。そんな2都市の移動を満喫しました。

写真1. アムステルダム中央駅に着いたユーロスター
復習:ブリュッセルとアムステルダムの移動


写真群1. ユーロスター(左)とIC(右)(いずれもブリュッセル南駅で撮影)
最初にブリュッセルとアムステルダムの移動方法について紹介します。
図1. ブリュッセルとアムステルダムの位置関係(googleマップより引用)
ブリュッセルとアムステルダムの位置関係を示しました(図1)。だいたい200km離れており、列車で行くには適度な距離です。
では、列車移動の場合は、どの程度の所要時間や頻度なのでしょうか。まず、ベルギー国鉄の国際線予約ページの検索結果をご覧いただきましょう(図2、2日後の検索結果)。

図2. ブリュッセルからアムステルダムへの予約画面(SNCB/NMBS公式サイトより引用)
多くの人はベルギー国鉄をSNCBと称しますが、オランダ語ではNMBSと称します。そのため、ここでは両方の表記を併記しました。
ブリュッセルとアムステルダムの移動方法は主に2通りあり、以下にまとめます。
表1. 移動方法概要
ユーロスター | IC | |
所要時間 | 2時間前後 | 2時間50分前後 |
運転間隔 | 毎時1本程度 | 毎時1本 |
価格(1等) | 100€前後 | 91.5€ |
価格(2等) | 89€前後 | 56.5€ |
座席指定 | 全車指定制 | 全車自由席 |
要点は以下の通りです。
- ユーロスター(全車指定制)とIC(全車自由席)がある
- ユーロスターは2時間前後、ICは2時間50分前後である
- ユーロスタ―、ICとも毎時1本程度であるが、ユーロスターはダイヤホールがある
- 価格はICのほうが安いが、ユーロスターも早割のような制度がある
速さのユーロスター、価格と利便性のICという棲み分けでしょうか。ユーロスターはブリュッセル南駅にしか停車しませんが、ICはブリュッセル中央駅やブリュッセル北駅に停車し、ブリュッセル市内からの利便性に配慮しています。
また、ユーロスターはフランス流のシステムとあってか、全席指定席です。ドイツ鉄道のICEのように任意指定制のような制度でさえありません。つまり、指定席が完売されている場合、その列車に乗ることは不可能です。早割が充実していることもあり、早めに予約する乗りものという印象が強いです。一方、ICは全席自由席であり、着席をあきらめれば必ず移動できる強みがあります。毎時1本が約束されていることもあり、融通が利く乗りものという印象があります。
重要ICはユーレイルパスで乗車可能ですが、ユーロスターはパスホルダー座席を予約する必要があります。パスホルダー座席は通常の座席より販売数が制限されており、前もって予約するのが前提です。前もって予約するのであれば、通常の座席の早割のほうがトータルとして安く済むでしょう。鉄道パスの利点の1つの機動性がユーロスターは発揮されません。
補足古い書籍を読むと、この区間の赤い高速列車のことをタリスと称しています。経営統合もあり、旧タリスはユーロスターに統合しています。旧タリスをユーロスターと呼ぶことはもはや常識の範囲ですが、念のため補足させていただきました。
ここまで詳細に解説しました。公式サイトから予約できると思いますが、日本語で予約できないことに不安を感じる人もいるかもしれません。下記のサイトであれば、日本語で予約できるので安心です。


Omio:ヨーロッパ鉄道旅行交通予約サイト

また、その予約にはクレジットカードが便利です。
個人的にはエポスカード
海外旅行に使えるカード:エポスカードで詳細を紹介しています。
ユーロスターの旅
さて、実際にユーロスターに乗ってみましょう!今回はブリュッセル南駅からアムステルダム中央駅まで乗りました。
ユーロスターの車内
最初に車内を紹介します。

写真2. ユーロスターの1等車車内全景
ユーロスターの1等車車内の全景です(写真2)。ワインレッドの座席が高級感あります。

写真3. ユーロスターの1等車車内
別の角度から撮影しました(写真3)。欧州の高速列車(車両の幅は日本の在来線特急と同等)のスタンダードの横3列配列です。ゆったりとしていそうに見えますが…。

写真4. シートピッチは狭い
シートピッチ(座席の前後間隔)は狭いです。

写真5. 大人の男性が入るとキツキツ
大人の男性が座るとキツキツです(写真5)。この人が特に大柄というわけではなく、座席間隔の問題です。もっともこの点はユーロスターに限ったことではなく、欧州の高速列車に共通の傾向です。

(参考)写真6. 近鉄特急ひのとりのプレミアムシート
参考に近鉄特急ひのとりのプレミアムシートを表示しました(写真6)。だいぶ違うでしょ?

写真7. セミコンパートメントもある
パーテンションで区切られたセミコンパートメントもあります(写真7)。

写真8. セミコンパートメントの様子
セミコンパートメントの様子です(写真8)。向かい合わせの座席であれば、それなりに広々と使えそうです。

写真9. 座席からの目線
座席からの目線です(写真9)。独特の配色はフランスらしさを感じますが、前の座席が迫っており、欧州の鉄道のサービスレベルが意外と低いことに気づかされます。広いシートピッチで潤沢な座席が提供される、日本の新幹線のレベルの高さにも。

写真10. 座席前のテーブル
座席前のテーブルです(写真10)。携帯電話を置くスペースと充電設備が整っています。これはありがたい仕様です。

写真11. テーブルを引き出す
テーブルを引き出します(写真11)。パンなどを食べるにはちょうど良いでしょう。弁当を食べる人は少ないでしょう。欧州には弁当は一般的ではありませんから…。

写真12. 足のせもある
足のせもあります(写真12)。

写真13. 座席の様子
座席の様子です(写真13)。ユーロスターではなくタリスの表示です。

写真14. デッキの様子
デッキの様子です(写真14)。ちょうど乗務員さんが床にこぼれた飲みものを拭いていました。

写真15. ユーロスターカフェ
ユーロスターカフェが連結されています。実態はスナック菓子、飲みものの自動販売機と気持ち程度のカウンターです。

写真16. 自動販売機がある
自動販売機があります(写真16)。

写真17. ユーロスターカフェの様子
反対側も撮影しました(写真17)。車両のかたすみにある印象です。ブリュッセルからアムステルダムは2時間程度であり、座席にとどまっていても苦ではないということでしょう。

写真18. トイレの様子
トイレの様子です(写真18)。洗面スペースもあります。

写真19. トイレの様子
トイレの様子です(写真19)。

写真20. トイレの様子
トイレの様子です(写真21)。
客席からトイレまで空間演出にはこだわりがあり、そのような意味では高級感や居心地の良さを感じました。
ブリュッセルからアムステルダムまでの車窓

写真21. ブリュッセル南駅に入るユーロスター
ユーロスターが入線してきました(写真21)。ユーロスターはブリュッセル南駅の3番線~6番線のことが多いです(イギリス方面は1番線か2番線)。

写真22. ユーロスターが入線
ユーロスターが入線します(写真22)。

写真23. ユーロスターと主張
ユーロスターと主張しています(写真23)。さて、乗り込みましょう!

写真24. 地上に上がる
ユーロスターカフェに期待しながら車内探検し、そして失望して自席に戻ったら、北南連絡線の地下区間を過ぎ、北駅近くの地上区間に出ていました。

図3. 今回の走行経路(OpenRailwayMapより引用、赤系の線が最高速度の高い線路を示す)
今回の経路を示しました(図3)。高速列車といえど、アントウェルペン(英語読みでアントワープ)までは高速新線を走りません。

写真25. ブリュッセル北駅を通過!
ブリュッセル北駅を通過します(写真25)。ここを通るICやICE(ドイツの高速列車)はブリュッセル北駅に停車しますが、わがユーロスターは通過します。ユーロスターやTGVといったフランス系の高速列車の発想は航空機に似ており、停車駅を厳選する傾向があります。全席指定制という制度も航空機を意識したのでしょう。

写真26. ブリュッセルの高層ビル群が見える
私は進行方向左側の進行方向逆向きの席に座っていました。そのため、おおむね西側の車窓です。朝時間帯とあり、順光となる西向きの座席というのはありがたかったです。その西側にはブリュッセルの高層ビル群が見えます(写真26)。観光客の行かないブリュッセルのもう1つの姿です。

写真27. 住宅街を走る
住宅街を走ります(写真27)。日本と異なり、線路の数も多く、インフラのぜいたくさを感じます。

写真28. 別の線路と分岐する
別の線路と分岐します(写真28)。

写真29. 線路の規格が上がってきた
線路の規格が上がってきました(写真29)。

写真30. 現在は146km/h!
携帯電話に速度アプリをインストールし、現在の速度を算出してもらいました。だいたい146km/hでしょうか。日本の在来線では稀有な速度でありながら、高速列車にしては遅い、そんなレベルです。ありがたいことにユーロスターはWi-Fiが備わっており、このようなふざけたことも可能です。

写真31. メヘレン手前を走行中
メへレン手前を走行中です(写真31)。

写真32. 速度が落ちた
信号待ちかなにかでしょうか。速度が30km/h以下に落ちました(写真32)。

写真33. メヘレンを通過!
メヘレンを通過しました(写真33)。ブリュッセルとアントウェルペンの中間付近です。

写真34. のどかな風景を走る
のどかな風景を走ります(写真34)。

写真35. 川を渡る
川を渡ります(写真35)。

写真35. 速度を取り戻す
速度はある程度取り戻していました(写真35)。

写真36. 都市に入る
都市に入りました(写真36)。ベルギー第2の都市、アントウェルペンももうすぐです。

写真37. 住宅街に入る
住宅街に入りました(写真37)。生活水準が高そうな風景です。

写真38. アントウェルペン中央駅に停車!
最初の停車駅、アントウェルペン中央駅に停車します(写真38)。この駅はもともと頭端式ホームの駅でしたが、市街地を貫通する線路が新たに建設され、通過式の地下ホームが新設された経緯があります。輸送上のネックとなる部分を徐々に改良し、地道に輸送改善に努めるベルギー国鉄の努力が見えます。

写真39. 地上に出た
地上に出てきました(写真39)。アントウェルペンからは高速新線に入り、ユーロスターの本領発揮です。

写真40. 200km/hを突破!
いつの間にか200km/hを突破していました(写真40)。

写真41. 牛が見える
牛が見える光景も展開します(写真41)。

写真42. のどかな光景を走る
のどかな光景を走ります(写真42)。

写真43. のどかな光景を走る
のどかな光景を走ります(写真43)。

写真44. 時速287kmでベルギーからオランダへ
287km/hでベルギーからオランダに入ります(写真44)。この時点で今回のベルギー旅行は幕を閉じ、旅行の舞台はオランダに移ります。

写真45. 高速道路と並走
高速道路と並走します(写真45)。

写真46. 物流拠点もある
物流拠点もあり、オランダが産業国であることを実感します(写真46)。

写真47. 在来線も見える
車窓に在来線も見えます(写真47)。

写真48. 時速257kmで走行中!
257km/hで走行しています(写真48)。

写真49. のどかな風景を走る
のどかな風景を走ります(写真49)。

写真50. のどかな風景を走る
のどかな風景を走ります(写真50)。

写真51. 速度が下がってきた
速度が下がってきました(写真51)。

写真52. オランダ国鉄の列車が並走!
オランダ国鉄の列車が並走します(写真52)。アントウェルペンもオランダ語であり、言語で国境を越えた実感はわきません。かわりに車両の色が変わり、別の国に入ったことを実感します。

写真53. オランダ国鉄の列車もなかなか食らいつく
オランダ国鉄の列車もなかなか食らいつきます(写真53)。

写真54. ロッテルダム近郊を走行中
ロッテルダム近郊を走行中です(写真54)。近代的なビルが多く、オランダ第2の都市の興隆がわかります。

写真55. ロッテルダム中央駅に入る
ロッテルダム中央駅に入ります(写真55)。

写真56. ロッテルダム中央駅に到着!
ロッテルダム中央駅に到着です(写真56)。アントウェルペンからここまでは高速列車の真価を見せつけていた区間と思います。

写真57. ロッテルダムを発車!
ロッテルダムを発車しました(写真57)。

写真58. 高速新線に入る
高速新線に入ります(写真58)。

写真59. 快調に走る
快調に走ります(写真59)。

写真60. 他の線路をまたぐ
他の線路をまたぎます(写真60)。

写真61. 220km/h以上で走行!
220km/h以上で走行中です(写真61)。

写真62. 高速道路が見える
高速道路が見えます(写真62)。

写真63. 速度が落ちる
速度が落ちてきました(写真63)。このときは先行列車に追いついたと認識していましたが、鉄道ジャーナル2024年10月号の記述によると、高架橋の亀裂による徐行のようです。すぐに補強しないのでしょうか。安全に影響ないように速度を落としているのです。

写真64. 牛が見える
牛が見えます(写真64)。

写真65. 民家が見える
民家が見えます(写真65)。ベルギーの民家に雰囲気が似ていますが、違いもあるように感じます。

写真66. 速度は低いまま
速度は低いままです(写真66)。

写真67. 航空機が見える
航空機が見えます(写真67)。スキポール空港が近いことを感じます。

写真68. 線路が増える
線路が増えてきました(写真68)。

写真69. 建物も増えてきた
スキポール空港やアムステルダムに近づくにつれ、建物も増えてきました(写真69)。

写真70. 速度は若干回復
亀裂が入っていた高架橋区間を抜けたためか、速度は若干あがっていました。

写真71. スキポール空港に停車
スキポール空港に停車します(写真71)。ここまでが高速列車らしい区間です。スキポール空港からアムステルダム中央駅へは在来線です。スキポール空港は大きな空港であり、アントウェルペンやロッテルダムから航空機に乗る需要も狙っているのでしょうか。

写真72. 空港近くを走る
空港近くを走ります(写真72)。

写真73. 再開発地を走る
再開発された場所を走ります(写真73)。

写真74. 新しい建物が多い
新しい建物が多いです(写真74)。観光客が向かうエリアではありませんが、都市らしさを感じます。

写真75. ドイツ鉄道車が停車中
ドイツ鉄道車が停車中です(写真75)。アムステルダムから南東方向に向かうフランクフルト方面はICEですから、ベルリン方面に向かうICでしょう。

写真76. アムステルダムらしい光景が見える
アムステルダムらしい光景が見えます(写真76)。北側を向いており、旧市街地は南側ですが、これだけでもアムステルダムらしさを感じます。

写真77. 運河を渡る
運河を渡ります(写真77)。アムステルダムは運河が多い都市です。

写真78. アムステルダム中央駅に停車!
アムステルダム中央駅に到着します(写真78)。

写真79. 乗客が降りる
乗客が降ります(写真79)。

写真80. ユーロスターの先頭部
ここまで走ってきたユーロスターの先頭部です(写真80)。
ユーロスターに乗ってみて

写真81. ワインレッドの車体は高級感がある
今回、ブリュッセルとアムステルダムの移動にユーロスターを選択しました。座席は狭いものの、照明や色づかいの工夫で快適な「華」のある空間で移動できました。また、(徐行区間があるものの)高速性も発揮され、高速列車らしい速度も堪能できました。
一方、1時間間隔に見えつつ2時間程度間隔が開いたり、全席自由席のベルギーやオランダのなかで全車指定席という制度を採用していたりと、利便性という意味では疑問の付く移動でした。そして多客期でもないのに2日前だと座席の空きがなく、(駅に到着したタイミングで空席のある列車がなく)結果として待ち時間が生じるというシナリオも大いに想定されます。これはベルギーやオランダのシステムではなく、フランスのシステムです(ドイツ鉄道のサイトでユーロスターを予約しようとすると、フランス国鉄のシステムにつないでいる旨の表示がなされる)。
フランスの高速列車のシステムは航空機のそれに近いように感じます。例えば、停車駅を極力排除し、厳選された本数の直行便で輸送し、自由席による飛び乗りを認めないという点です。
個人的にはブリュッセル以北についてはベルギーやオランダのシステムも取り入れても良いと感じます。また、需要の多さを鑑みると、フランスに関係ない区間では30分間隔の高速列車を約束しても良いでしょう。
ともかく、利便性に全振りしたベルギーやオランダで、利便性に欠けるフランスのシステムによる列車が運転されるという事実が趣味的に興味深く感じました。
ここまで詳細に解説しました。公式サイトから予約できると思いますが、日本語で予約できないことに不安を感じる人もいるかもしれません。下記のサイトであれば、日本語で予約できるので安心です。


Omio:ヨーロッパ鉄道旅行交通予約サイト

また、その予約にはクレジットカードが便利です。
個人的にはエポスカード
海外旅行に使えるカード:エポスカードで詳細を紹介しています。
果たして前後はどこに行ったのでしょうか?
ブリュッセルからアムステルダムへのユーロスターの旅:現在地
Hotel Espresso City Center(アムステルダムのホテル)の宿泊記(→次)
★本旅行記については、24年夏旅行のまとめで全体像(予算、日程、感想、そして次回への改善点)をまとめています。