中央ヨーロッパに位置するオーストリア。ドイツ語圏らしさの優れたオペレーションと、優雅さを兼ね備えた素晴らしい旅行先です。そんなオーストリアは鉄道旅行には最適の旅行先でもあります。そんなオーストリア鉄道旅行に関する情報をまとめました。
写真1. ウィーンの中心部の優雅な街並(地下鉄でアクセス可能!)
オーストリアとその鉄道の基礎知識
図1. オーストリアの位置(wikipediaより引用、深緑色の領域がオーストリア、薄緑色の領域がEUです)
まず、オーストリアの概要についてまとめます。
・首都:ウィーン
・鉄道の営業キロ:4859km(2012年、世界の鉄道から抜粋)
・主な都市:ウィーン、ザルツブルク
・主な観光地:ウィーン旧市街、アルプス山脈
オーストリアは日本人にとってみたらあまりなじみが薄いかもしれません。しかし、ウィーンのある国といえば親しみがわくでしょうか。では、オーストリアでは何語が使われているのかという設問となると、どれだけ認識があるのでしょうか。答えはドイツ語(※)です。大きなくくりでいうとオーストリアに住んでいるのはドイツ人です。
※ドイツで使われているドイツ語と、オーストリアで使われているドイツ語は異なります。また、オーストリア人をドイツ人扱いすると快く思わない人もいると聞きます。しかし、本記事では簡単のためにそのような細部には立ち入らないことにします。
ドイツ人は几帳面できっちりしているイメージがあります。また、ウィーンというと優雅なイメージがあります。オーストリアはそのドイツ人らしい几帳面さと、ウィーンに代表される優雅さの両方をあわせ持った国と感じました。
そのオーストリアはウィーンという大都市が東部にあり、そのほかの地方は小都市が点在します。とはいえ、几帳面なドイツ人が運営する国柄なのか、鉄道の利便性は高いです。歴史的にドイツとつながりがあったことから、現在でも鉄道のシステムはドイツのそれに近いものがあります。
ウィーンは大都市ですが、日本の東京のように衛星都市ばかりあるのでなく、ウィーンの近くにも自然が多くあります。観光客的にはウィーンから、自然を満喫する日帰りの旅を楽しめるというメリットがあります。
なお、オーストリアに限らず、世界各国の鉄道に関する基本情報がまとめられた優良書籍(世界の鉄道)があります。オーストリアの鉄道に興味がわいたら、下記の書籍で周辺国の知識を広げることも重要です!
オーストリアの鉄道利用について
では、オーストリアの鉄道利用の実践的な内容について紹介しましょう!
オーストリアの列車種別
オーストリアは意外と列車種別が多いですが、単純化すればそこまで複雑ではありません。ここでは簡単のために単純化して紹介します。
・RJ:日本でいう在来線特急に相当。一部高速新線を通り、新幹線に近い速度まで出す。座席は1等、2等ともに任意指定制。
※ドイツのICEも乗り入れますが、性格としては同じです。ドイツブランドがICE、オーストリアブランドがRJ
※ハンガリー直通系統は全席指定制です。
写真2. ブダペスト東駅に停車中のレイルジェット(ハンガリー直通便)
・IC:日本でいう在来線特急に相当。座席は1等、2等ともに任意指定制。
※理解のしかたとしては、ICが基本にあって一定の水準を満たしたらRJになるという考えが良さそうです
・REX:日本でいう在来線快速に相当。
写真3. クレムスに停車中のREX(ウィーン・ヨーゼフ行き、Sバーン等との並行区間で快速運転)
・R:日本でいう在来線普通に相当。
写真4. クレムスに停車中のR(ザンクトペルテン行き)
・Sバーン:日本でいう近郊電車。東京の山手線、大阪の大阪環状線に相当。ただし、小さな都市にも運転されていて、日本の都市近郊電車と考えたほうが良い
※特にウィーンでは地下鉄なみに本数が多い区間もあります
写真5. ウィーンのSバーン(ウィーンヨーゼフ駅で撮影、このS40系統は30分間隔なので注意!)
RJとICについて任意指定制と記しましたが、そもそも任意指定制とは何でしょうか。常磐線特急や中央線特急と同じといえば簡単ですが、もう少し細かく説明しましょう。
日本ではJRの多くの特急に指定席と自由席が連結されています。1号車は指定席、2号車は自由席という具合に、それらは厳格に区分けされています。しかし、これでは自由席だけ混んだり、指定席だけ満席だったりと不合理です。
そのようなことがあるのか、オーストリアの長距離列車には「自由席」「指定席」という区分けはありません。予約された席が指定席で、そうでない席は自由席です。
わかりやすくするために、日本の新幹線のぞみ号で例えましょう。今、のぞみ1号博多行きに乗っているとしましょう。目の前の1A席は東京から名古屋までの予約が入っていますが、隣の1B席は京都から広島までの予約が入っています。この場合、1A席は東京から名古屋は指定席、名古屋からは自由席です。一方、1B席は東京から京都と広島から博多までは自由席、間の京都から広島までは指定席です。ご自身が座席を予約していない場合は、東京から名古屋までは1B席に座り、名古屋からは1A席を使うのです。
このように座席を指定しない場合は座席を移動する可能性があります。これが嫌であれば、手数料を払って座席を予約するば良いですし、手数料が惜しければ座席を予約しないだけのことです。
写真6. 座席の予約状況を示す表示
では、どのように特定の席に予約が入っているか確認するのでしょうか。きちんと車内に座席予約状況が表示されています(写真6)。この場合、ザンクトペルテンからリンツまでは座席予約済、他の区間は予約なしということです。このとき私はウィーンからザンクトペルテンまでの乗車でしたから、この座席は気兼ねなく使えます。
オーストリアの列車利用方法
(我々外国人にとって)長距離列車の使いかたは2通りあります。1つは鉄道パスを利用して、気ままに乗ること。もう1つは事前に安い金額で予約して利用する方法です。オーストリアの鉄道がありがたいのは、乗車券なしで座席指定券だけ購入できることです。
鉄道パスを利用して座席を予約するのは、「その列車に乗ることがおおむね確定しているが、行動にある程度の自由度を与えたい」場合が良いでしょう。また、事前に乗車券込みで予約するのは、「その列車に乗ることがほぼ確定している」場合が良いでしょう。
でも、座席指定や乗車券の入手が大変?そんな声があると思い、事前に乗車券を手配する方法を詳しくまとめています。
ウィーンからブダペストまでの列車のネット予約方法(手数料なし!)
※座席予約のみの場合は、列車選択画面の前にSeat only(no ticket)と表示されますので、そちらを選ぶと10ユーロ未満で予約できます。
※国際列車ですが、この場合の考えかたは国内列車と同じです。一般的に国際列車の場合は出発国の国鉄から予約するとスムーズです。この場合はオーストリアからハンガリーですので、オーストリア国鉄から予約しています。
なお、オーストリアの鉄道路線の多くは1時間に1本以上の運転が確保されている路線が多いです。また、「毎時40分に××行きが発車する」というようにダイヤがパターン化されています。そのため、旅程は非常に立てやすいです。
オーストリアに限らず、ヨーロッパの列車の多くは座席の向きを変えられません。列車は前後に動く乗りものですから、必然的に半分程度の席は後ろを向いています。これはどうかしていると思いますが、旅行者はこれに対応せねばなりません。
そのため、列車の進行方向に向かう座席を選択する必要があります。私の実感としては、RJの場合はウィーン中央駅基準で東側に1等車がくるというものです。ただし、オーストリア国鉄の場合は座席選択画面で進行方向や窓割まで案内してくれるので、それに従いましょう。
オーストリア国鉄の特異点:ドイツを通過!
オーストリア国鉄のネットワークの特徴の1つに、幹線のザルツブルク-インスブルック間でドイツを通過することが挙げられます。ザルツブルクからインスブルックまでの鉄道路線はオーストリア国内のものと、ドイツを通るものがありますが、ドイツを通過したほうが効率が良いのです。
図2. ドイツを通過する経路をとる(googleマップより引用)
このようにドイツを通過します。もう少し巨視的にみると、オーストリアにドイツが入り込むようになっていることがわかります。とはいえ、ドイツもオーストリアもドイツ語を使う国ですし、冷戦下でも同じ西側陣営(※)でしたので、外国を通るという緊張感はそこまでないでしょう。
※このあたりは東ドイツではなく、西ドイツでした。オーストリアは東ドイツとは接していませんでした。東西ドイツ双方と接していたのはチェコスロバキアだけでした。
オーストリアの鉄道旅行で印象に残った場所
オーストリアの鉄道旅行で印象に残った場所を記します。クリックいただくと、実際の旅行記を読むことができます。
写真7. ウィーン中央駅には他の国の車両もやってくる
※左側はチェコ国鉄所有のレイルジェット、右側はドイツ鉄道所有のICE
首都ウィーンのSバーン
首都ウィーンでは地下鉄とSバーンが活躍しています。そのSバーンに乗りました。「通勤電車」といえば日本の山手線などの車両を思い浮かべますが、どちらかというと国鉄急行型の車内という感じでした。また、観光地ではないウィーンの街並も堪能できました。
ウィーン観光
正直、ウィーンにはあまり期待していませんでした。後述のナイトジェットに乗るために向かった側面が強かったです。しかし、優雅な街並み、すごい宮殿、(弊サイトでは取り上げていませんが)優雅な飲食店など魅力満点の都市でした。そのウィーンの魅力を私なりにまとめました。
写真8. ウィーンは建物から美しい!(オペラ座だったかな?)
オーストリアの自然:渓谷を楽しむ
ウィーンから日帰りで行ける範囲であっても雄大な自然を楽しめます。もちろん、ウィーンとの行き来は列車です!
オーストリアの列車乗車記
オーストリアの列車の乗車記を記しています。
レイルジェットの旅
オーストリアからハンガリーまで列車で旅しました。国境をこえるといっても、2時間半の旅で、EU内ですのでそんなに身構えることもありません(でも国境を超えるので日帰りであっても身分証は携帯しましょう!)。
夜行列車の旅
写真9. チューリッヒ-ウィーンの系統には2階建て車両も投入される
オーストリアにはナイトジェットという夜行列車が走っています。ナイトジェットは系統によってはオーストリア国外にも直通します。そんなナイトジェットにも乗りました。
オーストリア鉄道旅行に関する細かくて深い情報のごあんない
ここまで大まかな内容を述べてきました。しかし、それだけでは芸がありません。そこで、オーストリア鉄道旅行の細かな利用場面ごとにその詳細を書きました。狭くて「深い」情報を収録しています。
オーストリアを中心とする夜行列車:ナイトジェット
ナイトジェット(中央ヨーロッパの夜行列車)の概要と運転系統の一覧
2016年12月。ドイツ国内のみならず近隣の諸外国にも運転されていた夜行列車ネットワーク「シティナイトライン」が消滅した瞬間でした。しかし、それをもってドイツの夜行列車はなくなったわけではありません。「シティナイトライン」の後継で「ナイトジェット」がかわりに走り始めました。そのナイトジェットの運転系統をまとめたわかりやすいサイトさんがなかったので、私が勝手に作ってしまいました。
ナイトジェットの運転系統がわかったところで、予約する方法がわからなくては意味がありません。ここでは、細かな予約が可能なオーストリア連邦鉄道からの予約方法を記しています。
国際列車の予約方法
ウィーン観光する人の多くは、ブダペスト(ハンガリー)やプラハ(チェコ)を合わせて観光することも多いでしょう。その国際列車の予約方法を記しています。
チェコ国鉄の公式サイトから乗車券と座席を予約する方法を述べています。チェコ国鉄では窓割もわかるので便利ですね!オーストリア国鉄のサイトからではなく、チェコ国鉄のサイトから予約したのは、国際列車の予約は出発国のサイトからおこなったほうが無難というセオリーに従ったためです。
オーストリア国鉄の公式サイトから乗車券と座席を予約する方法を述べています。オーストリア国鉄では窓割もわかるので便利ですね!ハンガリー国鉄のサイトからではなく、オーストリア国鉄のサイトから予約したのは、ハンガリー国鉄のサイトから予約した場合にはハンガリー国内のハンガリー国鉄の駅でチケットに引き換えねばならないためです。
確かに、オーストリア国内では携帯端末によるチェックでしたが、ハンガリーに入った途端、目視によるチェックになっていました。ハンガリーがオーストリアより遅れているような印象を抱いたものです。
上記の予約の際に、オーストリア国鉄でカードが使えないというトラブルが発生しました。このトラブルの原因を探るとともに、意外な解決法を示しています。
鉄道旅行に当たって入手したほうが良い本
ここまでオーストリアの鉄道旅行に関する基本的な内容を記しましたが、実際に現地に向かう場合はガイドブックや時刻表は必須でしょう。そんな必携の本をまとめました。
必須となるのは、地球の歩き方 ウィーンとオーストリア版です。カフェ情報のような「女子向け」の内容は薄いですが、旅の教科書という感じがして、頼もしいです。
旅の教科書ともいえる地球の歩き方先生だけでは機能不足です。現地では持ち歩く必要がないかもしれませんが、プランニングの際は必携です。
地球の歩き方先生とは異なり、ヨーロッパ時刻表については扱っている書店も少ないことでしょう。そのため、以下のリンクから買うのも手です。
また、ドイツとオーストリアの鉄道旅行の雰囲気を味わえる書籍(ドイツ&オーストリア鉄道の旅)もあります。やや古い情報ですが、ワクワク感が伝わってきます。情報のアップデートはどうするのか?そんなのは問題ありません。弊サイトで「情報のアップデート」も含めた書評記事を書いていますので、それを合わせて読めば情報のアップデートも完璧です。
旅行の手配の際に利用したほうが良いサービス
往復の航空券、現地の宿泊施設、現地のインターネットはあらかじめ日本で手配するのが鉄則です。そうでないと、現地で貴重な観光時間の一部を割いて、手配せねばならないからです。日本であらかじめ手配すれば、現地での時間を観光などに最大限使うことができます。ここでは、そのサービスを紹介しましょう。
航空機の予約
海外旅行だと航空便の選択肢として、「直行便」「乗継便」というのが選択肢に登場します。一般的に直行便が高く、乗継便が安いです。そして、ヨーロッパ旅行の場合、乗継箇所は韓国、中国、ロシア、フィンランド、トルコなど多くの選択肢があります。でも、それだけの選択肢の情報をそれぞれ公式サイトで探すのは大変ですよね?
そこで登場するのが代理店です。代理店であれば、多くの航空会社の情報を知っています(旅行業界に限らず、商社を使うメリットです)。でも、旅行代理店に行くのは大変?そんな場合は、自宅でインターネット上で探してみましょう!
このサイトであれば、出発地と到着地を入力すれば、価格順だったり所要時間順に航空便を複数教えてくれます。ご自身の希望に合わせて航空便を選択すれば予約完了です!
ホテルの予約
ホテルを探すのも大変です。地球の歩き方先生にホテル情報は掲載されていますが、そこから電話予約するのも大変です。だいいち、日本語が通用しない相手です。
そこで登場するのが代理店です。ここで注意したいのが、日本の代理店を使うことです。日本の代理店であれば、いざという時に日本語で連絡できます(そして、以下のサイトでは「いざ」というときがありませんでした)。
このサイトさんは地図からホテルを選択することができますので、非常に助かります。地図上に表示された独自の★の数からホテルを選択できるのです。
インターネット環境の整備
海外で手持ちの電話機でそのままインターネットを利用することは困難です。携帯電話会社と契約し、高額な海外利用サービスを利用せねばなりません。
そんなお金があるのであれば、日本でwifiルータを契約し、それでインターネット利用したほうが良いでしょう。以下の会社の4Gサービスを利用しましたが、特に問題なく使えました。それに本体の重さも軽かったです。
2人以上が同一行程で使う場合、全員で1台のルータを共用することとすれば、価格も抑えられます。
海外ローミングと比較して78%以上お得?
海外インターネットならGLOBAL WiFi
オーストリアに関する記事一覧
オーストリアに関する記事一覧はこちらをご覧ください。
ここまで詳細に解説しました。公式サイトから予約できると思いますが、日本語で予約できないことに不安を感じる人もいるかもしれません。下記のサイトであれば、日本語で予約できるので安心です。


Omio:ヨーロッパ鉄道旅行交通予約サイト

また、その予約にはクレジットカードが便利です。
個人的にはエポスカード
海外旅行に使えるカード:エポスカードで詳細を紹介しています。